産婦人科医になった理由

医大生は、学生実習をおこないながら、自分が進みたい進路先を決めていきます。

私の場合、もうすぐ6年生になるというのに、自分がどの科に進みたいのか

全くビジョンが見えませんでした。

同級生たちが、次々に自分の進路を決めていくなか

私には、やりたい科はみつからない。

だけど、やりたくない科はいっぱいありました。

内科はそもそも勉強が苦手だから無理でしたし、おもしろいと思えませんでした。

内科医は医師の中でも成績が優秀な秀才がなることが多いというのが、当時、我々

の世界の一般常識でした。(現在はそんなことないと思いますが)

眼科は生理的に無理。人の目にメスを入れるなんて怖くて絶対できない。

耳鼻科も生理的に無理。人の耳や鼻にメスを入れるなんて怖くてできない。

小児科 子供を診るのは、苦手だから無理。

少し興味が持てたのは

外科   乳がんに興味あったから

整形外科  スポーツ医学に興味があったから

しかし、この二つの科はいずれもバリバリの男性社会。

男子校に入学するようなもの。

したがって、医局の雰囲気が苦手で入局する決心はつきませんでした。

実習をひとつ終えるたびに、自分の進路の選択肢も徐々に狭まる状態。

そんな折、たまたま実習の休憩中に、いつものように皆と雑談していたところ

同じグループのメンバーの一人が

「いこまちゃん、産婦人科が似合っているよ」 と一言。

さらに、他のメンバーまでもそうだそうだと賛成。

産婦人科の実習はまだ始まっていませんでした。

まったく 脳裏になかった科を似合うと指摘され

一瞬思考回路が止まってしまった私。

なぜなら私は、血を見ることがとても苦手だったのです。

「じゃー医師になるんじゃねーよ」とつっこまれそうですが

子供の頃から、血を見るのが怖くて、生理的にどうにも苦手だったわけです。

子供時代は、誤って包丁やナイフで手をちょっとでも切ろうものなら

家中で大騒ぎでした。

血をみた瞬間、気持ち悪くなって半分ショック状態の有様です。

そもそも初経を迎えることすら恐怖だったところがあり、とうとう生理を経験するように

なって自分の出血を見ることすらけっこうショックだったので、ましてや、血を見ること

が多い産婦人科医の仕事など考えてもみませんでした。産婦人科医の仕事は別名、

ブラッドビジネス(血の仕事)と言われるほど、出血が多いのです。

その多さは外科での出血量をはるかに上回ります。

血の海を日常的に見なければならない産婦人科医の仕事は当時の私にとって、想定

外のことでした。

ただ、私が個人的に、将来最もなりたくない病気は子宮がんと卵巣がんでした。

人間は、自分が恐れるものに、むしろ、吸い寄せられるように惹かれるということもあ

るようで、怖いからこそ、興味も人一倍あったわけです。

怖いからこそ、産婦人科の専門知識を身につけて、それを自分の健康に役立てたい。

仕事が、自分自身のことにも役立つなんて一石二兆ではないか。

他に特別行きたい科もないし…

血が苦手なのさえ、克服できたら興味のある科なんだがなあ。

なんて考えること数か月。

結局



「血は、たくさん見るうちにそのうち慣れるだろう。なんとかなるさ」

と開き直る気持ちが湧いてきて、私は血が苦手なままに産婦人科医になることを決め

たのでした。

結果的には、それが大正解だったようで、血の苦手さは、研修医の間に克服。

現在では、この職業が天職であると感じるまでになりました。

何気ない友人の一言で決まってしまった私の人生。

その方に感謝です。

ちなみに、今の私は他人の血をみることは全く平気です。

でも、自分の血を見ることは、正直今でも苦手なのです。

採血されるときは相変わらず自分の血液は見ないように目をそむけています。

手を切ってしまった時などは、さすがに大騒ぎはしなくなりましたが、でてくる自分の血

にヒやっとしますし、明らかに心臓がバクバクしているのを感じます。

いつまでたっても、これだけは克服できそうにありません。
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by ikomatomomiclinic | 2010-10-26 17:30 | プライベートな話
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